各種予防接種から狂犬病・コレラ等海外渡航ワクチンまで

予防接種・トラベルクリニック

予防接種

Vaccine

予防接種

当院は、予防接種を専門にしている医療機関で、小児および成人の定期接種・任意接種をはじめ、海外渡航者のための渡航ワクチンを専門にしております。
当院は名古屋市予防接種指定医療機関のため、定期接種におきましては名古屋市に住民票がある方は当院に専用の予診票がありますので、それを使用して接種可能です。また愛知県広域予防接種事業協力医療機関でもありますので、名古屋市外の愛知県にお住いの方は、住民票のある保健センターで書類をもらってから来院してください。
予防接種およびトラベル外来は、全て完全予約制となっております。ご予約はWebまたはTEL(090-8568-3336)までお願い申し上げます。

小児の定期接種につきましては、下記のWebサイトが参考になりますので、ご参照ください。
KNOW-VPD!(http://www.know-vpd.jp/index.php)

小児の予防接種のポイント

小児の定期接種・任意接種についての詳細はここでは記載しませんが、ポイントとなることをいくつか列挙致します。

スケジュールについて

多くの方は生後2か月より開始されます。日付で1か月間隔で接種していくのがベストです。これは後々お子様が海外に行く場合に有利となります。
B型肝炎ワクチンは、初回接種から6か月あけて3回目接種が最もよいスケジュールになります。
ヒブと4種混合ワクチンの4回目はできるだけ1歳6か月以降で遅らせて接種するのがよいです。世界的には5種混合・6種混合ワクチンが多く、それらの多くは1歳6か月以降で接種することになっています。おたふくかぜワクチンは最低2回接種ですが、多くの方が1回しか接種していません。おたふくかぜワクチンは免疫がつきにくいワクチンですので、2回目をどのタイミングで接種するかを検討する必要があります。おたふくかぜワクチンの2回目は初回接種から4週間後以降に接種できますが、当院ではなるべく来院回数を抑えるため、水痘の2回目と同時接種で接種することをおすすめしています。
日本脳炎は、初回接種後、2回目は4週間あけましょう。生後6か月から接種できますので、日本脳炎のリスクが高い方(西日本へよく行く方やアジア地域へ渡航される場合)は早めにスケジュールにくみこんでいきます。1歳未満で帯同赴任や旅行などで海外渡航が控えている場合は、渡航される日にあわせて接種していく必要があり、スケジュール作成は専門医療機関でないと困難です。海外渡航を控えている場合は当院へスケジュールをご相談ください。詳細は帯同赴任の方へをご参照下さい。

接種部位

乳児における接種部位の世界のスタンダードは大腿です。
BCG以外の予防接種を腕に接種することはおやめください。
日本小児科学会も大腿を接種部位に推奨しています。
日本においては定期接種は皮下接種ですが、大腿は皮下組織が厚く深く接種できるため、局所副反応が出にくく、抗体面でも有利です。
また大腿は腕と違って広いですので、複数の同時接種もやりやすく、固定も容易です。

母子手帳の記載

接種日の記録は和暦ではなく、西暦で記載するようにすると、海外でもそのまま母子手帳が通じます。

帯同赴任をされる方へ

帯同赴任をされる場合、予防接種については下記のごとく注意点があります。

  • お子様の入られる学校が日本人学校、現地校、インターナショナルスクールかで要求されるワクチンが異なります。
  • 要求される予防接種と、今までの予防接種歴を比較し、不足分を接種していきます。
  • 今までの予防接種歴を事前に把握し、何が必要かを検討するため、受診前に母子手帳などの予防接種データを当院にお知らせ頂く必要があります。こちらの相談フォームから送信頂くと、当院より後程FAXやメールをお送りさせて頂きます。
  • 先進国やインターナショナルスクールの場合、お子さまの予防接種歴を英文で証明する必要があることが多いです。またアメリカの場合、BCG接種証明書を英文でつけておくと安心です。日本ではBCG接種をするため、ツベルクリン反応が陽性になることが多いですが、アメリカではBCG接種をしないためツベルクリン反応が陽性になると結核と診断され治療されてしまう恐れがあるため、それを防ぐための証明書になります。いずれの診断書も当院で発行可能です。
  • 持病をお持ちの方は、主治医に英文の診断書を記載してもらいましょう。主治医記載が困難な場合は当院でも英文診断書を発行できますので、主治医より日本語の紹介状をもらって来院ください。
  • 持病のある方で、その病気を現地の医療機関で診てもらう場合は、海外旅行保険の適応外となりますのでご注意ください。
未承認ワクチンについて

日本国内で利用可能なワクチンは、国の承認を得て流通しているワクチン(承認ワクチン:国産ワクチン)と、
国内での製造販売承認を得ていない未承認ワクチン(輸入ワクチン)があります。

輸入ワクチンは、既に海外で安全性・有効性が証明され、海外では承認・流通されていますが、日本では申請に基づく承認がされていないワクチンのことを言い、未承認ワクチンとなります。現在日本では、未承認ワクチンを必要とする方のために、日本国内の約款証明制度に基づき、医師による個人輸入という方法でワクチンを提供することが可能となっています。
当院では、海外渡航者に対して最善の医療および世界のスタンダードの医療を提供するため、国内に代替可能な承認ワクチンがない製剤については、WHO(世界保健機関)、欧州、米国で既に安全性・有効性が認められている製剤について、薬監証明制度を用いて接種の機会を提供しています。

未承認ワクチンを使用した場合、接種後に重篤な副反応が起こった場合にも、公的な保障制度はありませんが、民間企業による自社保証制度が適用となっていることがあります。当院で使用している輸入ワクチンについては、輸入代行業者による副作用救済制度がついております。また当院で採用している輸入ワクチンは、国外で多数の接種実績があり、重篤な副反応が起こることは極めて稀です。
なお、承認ワクチン・未承認ワクチンともにアナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応が出現することはごく稀にあることから、当院では、接種後30分程度は外来にて経過観察をさせて頂いております。

上記を踏まえ、滞在目的や期間に応じた渡航先のリスク、ワクチンの安全性や効果、承認ワクチンとの制度の違い等について事前に説明を行い、ご理解とご納得をいただいた上で未承認ワクチンを使用しています。もし、不明な点がございましたら院長に直接おたずねください。

2019年11月現在使用している輸入ワクチンは以下の通りです。

MMRワクチン(麻疹・風疹・おたふくかぜ混合)

血清型B 髄膜炎菌結合ワクチン

血清型ACWY 髄膜炎菌結合ワクチン

Tdapワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳混合)

A型肝炎ウイルスワクチン

B型肝炎ウイルスワクチン

A型肝炎・B型肝炎ウイルス混合ワクチン

狂犬病ワクチン

腸チフスワクチン(ポリサッカライド・結合型)

ダニ媒介脳炎ワクチン

コレラワクチン

狂犬病

狂犬病について01

世界の多くの地域で狂犬病が存在しており、中には狂犬病の危険性が高い地域があります。
日本語では狂犬病と記載するため犬のみと思われがちですが、猫・猿・コウモリ・スカンク・アライグマなど哺乳動物は全て狂犬病ウイルスを持っている可能性があります。

狂犬病について02

写真はCDCホームページより引用

そのため海外で動物に咬まれた場合、狂犬病を発症する危険性があります。
動物に咬まれた後の対処をきちんと行わずに、狂犬病を発症するとほぼ100%死亡してしまいます。
世界的には年間6万人弱が狂犬病で死亡しています。

成人の予防接種ワクチンについて

WHOより引用

感染経路・・・狂犬病ウイルスは感染動物の唾液に存在しており、感染動物に咬まれたり、傷や粘膜をなめられたりすることで人間に感染します。動物は自分の足も舐めるため、狂犬病ウイルスのついた爪でひっかかれても感染が成立することがあります。

病原体・・・狂犬病ウイルス

症状・・・10日~数年の潜伏期があり、発熱、頭痛、風邪症状に続いて、物が飲みづらくなり、水を恐れ(恐水症)、風を恐れる(恐風症状)ようになり、最終的に昏睡状態となり呼吸ができなくなり死亡します。

暴露後発病予防治療

WHOは各カテゴリーにわけて、暴露後発病予防治療を勧告しています。

カテゴリー 暴露の程度 接触の程度 勧告される予防治療
なし ・動物をなでた
・餌を与えた
・傷や病変のない皮膚を舐められた
治療不要
軽微 ・素肌を軽く咬まれた
・出血のない小さい引っ掻き傷やかすり傷
狂犬病ワクチン暴露後接種をレジメ通りに接種
重度 ・1か所ない数か所の皮膚を破る咬傷
・引っ掻き傷, 傷がある皮膚を舐められた唾液による粘膜の汚染
・コウモリによる暴露
抗狂犬病グロブリン製剤と狂犬病ワクチン暴露後接種を
レジメ通りに接種

ワクチン

狂犬病について04

WHO認定のワクチンはVERORAB®、Rabipur®、RABIVAX-S®、VaxiRab N®です。日本のトラベルクリニックでは、主に輸入ワクチンとしてVERORAB®、Rabipur®が流通しています。

狂犬病について05

日本では2019年にラビピュール®が承認されました。
2019年現在日本で承認されたラビピュールは流通量が少なく、原則的に暴露後接種のみとなっております。

スケジュール

暴露前接種(PrEP)と暴露後接種(PEP)があります。病院から離れた地域に渡航する人(病院までのアクセスが困難)、動物を扱う人や研究者、野犬、猿、コウモリなどの野生動物が多い地域に滞在する人など狂犬病の危険性が高い方には、暴露前接種(PrEP)を推奨します。暴露後接種(PEP)には様々なスケジュールがありますが、世界でよく使用される代表的なスケジュールを2つ下記に示します。暴露後接種は下記に示す以外にも様々な方法があります。

  • 暴露前接種
  • 暴露後接種(WHO法)
  • 暴露後接種(Zagreb法)

スケジュールのポイント

暴露前接種(PrEP)

従来は3回接種法でしたが、2018年にWHOが新しく2回法を提案しております。世界的には2回法で接種している国は少なく、従来の3回接種法が多いこと、日本で承認されたラビピュールが3回接種法で承認されていることから2019年現在当院では3回接種法を推奨としております。2回接種法は希望がある場合や渡航までに時間がない方に適応としております。追加接種は2年毎に行う方法と、1年後に4回目接種を行い、その後5年毎に追加接種する方法があります。

暴露後接種(PEP)

WHO方式では暴露前接種をしている場合と暴露前接種をしていない場合でスケジュールが異なります。動物咬傷があった場合、直ちに傷を水と石鹸でよく洗ってから病院を受診してください。可能な限り咬まれたその日に受診するのが望ましいですが、病院までのアクセスが困難な場合、遅くとも5日以内には受診してください。病院で、創部の処置、抗生剤投与、狂犬病ワクチン接種、さらに狂犬病暴露前接種をしていない場合は抗狂犬病ガンマグロブリン注射を行います。10年以内に破傷風トキソイド含有ワクチンを接種していない人は、破傷風トキソイド含有ワクチン投与も必要です(受傷後破傷風予防)。

大事なことは、暴露前接種をしている場合でも、動物咬傷があった場合は、必ず暴露後接種が必要であるということです。
特にお子様には、動物に咬まれた・傷や粘膜を舐められた・爪でひっかかれたということを
保護者の方にきちんと報告してもらうよう教育することが必要です。

注意点

東南アジア諸国を中心に、狂犬病ワクチンの偽物が出回る場合があります。海外で狂犬病ワクチンを接種する場合は信頼できる医療機関で接種しましょう。

暴露後接種を日本で行う場合

初回から日本で行うか、現地で接種を行い、その後の接種を日本で継続していくかの2つがあります。いずれにせよ、暴露後接種のスケジュール通りに行いますので、当院で接種を行う場合は事前に連絡をお願いします。

A型肝炎

ワクチン

感染経路・・・経口感染。A型肝炎ウイルスに汚染された食べ物や飲み物を口から摂取することで感染します。最近は性感染症としても注目されています。

病原体・・・A型肝炎ウイルス

症状・・・2~7週間の潜伏期間の後に、急な発熱、全身のだるさ、食欲不振、吐き気や嘔吐が見られ、数日後には黄疸が現れます。劇症型になれば死亡することもあります。

ワクチン・・・国産A型肝炎ワクチン(エイムゲン®)と輸入A型肝炎ワクチン(Havrix®・Twinrix®)があります。

ワクチンスケジュール

  • 国産A型肝炎ワクチン
  • 輸入A型肝炎ワクチン
  • 輸入A+B型肝炎ワクチン
B型肝炎

肝臓に炎症をおこすB型肝炎ウイルスによる感染症です。世界的には、約2億6千万人のキャリアがいるとWHOが2017年に報告しています。その多くはアジア・アフリカ地域に分布しています。

ワクチン

感染経路・・・血液などの体液の接触。近年は性感染症として重要になっています。

病原体・・・B型肝炎ウイルス

症状・・・感染して90~150日の症状のない期間があった後、倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、黄疸がおこります。皮膚発疹や関節の痛みが生じることがあります。大人での死亡率は1%くらいです。一部の人で慢性化し、肝硬変になったり、癌化することがあります。

ワクチン・・・国産B型肝炎ワクチン(ヘプタバックス-Ⅱ®、ビームゲン®)と輸入B型肝炎ワクチン(ENGERIX―B®・Twinrix®)があります。

ワクチンスケジュール

  • 国産B型肝炎ワクチン
  • 輸入B型肝炎ワクチン
  • 輸入A+B型肝炎ワクチン
腸チフス、パラチフス

途上国ではよくある感染症の一つです。東南アジアでは毎年700万人以上の患者が発生し、毎年約75000人が死亡しているという報告があります。世界全体では毎年2000万人以上の患者が発生し、毎年約22万3千人が死亡しているという報告があります。

腸チフス、パラチフス

THE LANCET:
VOLUME 385, ISSUE 9973,
P1136-1145, MARCH 21, 2015より引用

感染経路・・・経口感染。汚染された食べ物や飲み物を口から摂取することで感染します。

病原体・・・細菌(チフス菌)

症状・・・感染して1~3週間は症状がなく、その後、高熱、頭痛、全身のだるさ、高熱時に数時間現れる胸や背中、腹の淡いピンク色の発疹、 便秘などの症状が現れます。熱が高い割に脈が遅いのが特徴的です。重大な症状として、腸から出血したり、腸に穴が開いたりすることがあります。下痢は比較的少ないです。近年は南アジア・東南アジアを中心に多剤耐性菌が出現しており、大変問題になっています。図はTHE LANCETから引用した図ですが、南アジア・東南アジアなどの色の濃い地域には耐性菌が出現していることを示しています。

予防接種

予防接種

輸入ワクチンである、Typhim Vi®(ポリサッカライドワクチン)とTypbar TCV®(結合型ワクチン)があります。いずれも1回接種で2-3年有効です。2-3年毎に1回接種します。適応年齢はTyphim Vi®は2歳以上、Typbar TCV®は生後6か月からとなります。腸チフスには効果がありますが、パラチフスには効果がありません。有効性については、ポリサッカライドワクチンは50-80%、結合型ワクチンは89-100%と報告されています。インドをはじめとした南アジア、東南アジアのような高度流行地域では短期滞在であっても感染者の報告があり、接種を強く勧めています。

コレラ

途上国や難民キャンプで流行する感染症です。2017年には34か国で22万人強の患者数と5000人以上の死者数がWHOにより報告されています。その後も世界各地でアウトブレイクが報告されています。

コレラ

WHOより引用

感染経路・・・経口感染。コレラ菌に汚染された食べ物や飲み物を口から摂取することで感染します。

病原体・・・細菌(コレラ菌O1とO139)

症状・・・潜伏期は通常1日以内で、水様性下痢を呈します。軽症から重症まで様々であり、重症になると大量の下痢により強い脱水からショックに至り、死亡することもあります。

ハイリスク者・・・青年海外協力隊、JICA、NPO職員など人道支援者、インドやアフリカなど流行地域へ長期滞在する方

予防接種

予防接種

輸入ワクチンとして、経口不活化ワクチンであるDukoral®があります。コレラ菌O1とコレラ毒素Bサブユニットを成分とします。このコレラ毒素Bサブユニットは、腸管毒素原性大腸菌(ETEC:旅行者下痢症の主要な細菌)の毒素に類似しており、交差免疫性があると言われています。そのためコレラだけでなく、腸管毒素原性大腸菌による下痢もある程度防御します。コレラに対する防御効果は約85%、腸管毒素原性大腸菌による下痢に対する防御効果は67%という報告があります。

ワクチンスケジュール

  • 2~5際
  • 6歳以上~成人

追加接種の時期は2~5歳では6ヶ月後~2年以内、6歳以上では2年後となり、
この機会を逃して3年以上経過すると、初回スケジュールからやり直しとなります。

ワクチンの飲み方

① 150mlの冷水に粉末を溶かす。2-5歳の場合は溶かしたあと半分捨てる。

② ワクチンの瓶をよく振る

③ ①に②を混ぜる

④ 2時間以内に飲む。

ワクチンの飲み方

ワクチンの飲み方01

ワクチンの飲み方02

日本脳炎

東・東南・南アジア地域で流行する蚊媒介感染症です。
年間約5万人の感染者があると言われています。

日本脳炎

CDCホームページより引用

感染経路・・・蚊媒介感染症。主にコガタアカイエカが媒介します。

病原体・・・日本脳炎ウイルス

症状・・・日本脳炎を発症するのは0.1~1%程度。日本脳炎の死亡率は40%。通常6~16日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔気、嘔吐あり、意識障害、けいれん、異常行動、筋肉の硬直などが現れます。生存者の30~50%に精神障害や運動障害などの後遺症が残ります。

予防接種

日本脳炎ワクチン

日本で流通しているワクチンは、組織培養不活化ワクチン(北京株)で、ジェービックV®とエンセバック®があります。世界的には不活化ワクチン(IXIARO®、JEEV®など)、生ワクチン(IMOJEV®、CD.JEVAX®など)が存在しますが、日本のワクチンとの互換性は証明されておりません。そのため、海外で海外製の日本脳炎ワクチンを接種し、その後継続して日本で接種する場合は、2019年現在では国産ワクチンで接種し直しを推奨しています。お子様の場合は、原則的に定期接種となっていますが、定期接種の期間を逃すと任意接種となります。成人の方の多くは基礎免疫をもっておりますが、10年以内に追加接種をしていない方は抗体が下がっていますので、接種が必要となります。トラベラーズワクチンとして接種する場合は、年齢や過去の接種歴に応じて1回または2回の接種で抗体が上昇します。基礎免疫がない方は基礎免疫からつけるため3回接種が必要になります。その後は10年ごとに1回の追加接種をします。

  • 基礎免疫力がある方
  • 基礎免疫力がない方
ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ

厚生労働省のFORTHのページには海外渡航者への推奨ワクチンとして、破傷風という記載があり、これを破傷風単体ワクチンと誤解していらっしゃる渡航者、企業の方がおられます。正確には破傷風含有ワクチンのことであり、単体ワクチンのことではありません。
破傷風含有ワクチンは、DTP(三種混合)、DPT-IPV(四種混合)、Tdap(輸入三種混合)がメインであり、日本ではDT(二種混合)も小児期の定期接種として使用します。
昭和43年(1968年)以前の生まれの人は、小児期に破傷風に対する予防接種を行っていないため、基礎免疫からつける必要があります。

ジフテリア

ジフテリア菌の感染(飛沫感染)によって生じる上気道感染症です。風邪症状から始まり、重症化すると気道閉塞をおこし死亡します。合併症として呼吸不全、肺炎、麻痺、心筋炎、末梢神経障害が生じることがあります。死亡率は5-10%。
世界的には予防接種が普及し、罹患数は減少していますが、途上国など予防接種率が悪いところはジフテリア発症があります。特に近年ではインドやインドネシアなど南アジア・東南アジアを中心に、マダガスカルなどでもアウトブレイクを認めます。WHOによると2016年には約7000人の患者数の報告があります。

破傷風

破傷風菌が傷から感染し、その毒素により病気を引き起こします。破傷風菌は世界中の土壌に存在しています。土いじり、事故、動物咬傷、やけどなどの傷から感染します。開口障害、筋肉の緊張・硬直・強直性けいれんを起こし、呼吸不全を引き起こします。死亡率は20~50%。
世界的には一部きちんとした疫学データがとれていない地域もありますが、WHOによると2018年には約15000例の発症例が報告されています。

百日咳

百日咳菌の感染による気道感染症です。風邪症状からはじまり、次第に特有のけいれん性の咳発作を呈します。免疫のない小児(特に新生児・乳児)が感染すると呼吸不全により死亡することもあります。死亡率は0.2~0.6%。世界中で流行している感染症であり、年間約1600万人が罹患し、小児の死亡数は約20万人と報告されています。日本では、三種混合や四種混合のワクチン接種率が高く、新生児や乳児の感染は激減しておりますが、抗体の低下した学童期および成人の発症が増加しており、長引く咳の原因として重要な病気になっています。国立感染症研究所によると2018年には11190人の発症例が報告されています。百日咳に罹患した学童および成人が免疫の不十分な新生児・乳児に接触すると、感染した患児が重症化し、死亡する危険性が高いことから、世界各国では、学童や成人に対する百日咳含有ワクチンの接種がすすんでいます。

ポリオ

ポリオウイルスが経口感染(食物や水を介して感染)することによっておこる病気です。感染者の多くは症状が出ない、もしくは風邪症状などの軽微な症状ですが、0.1~2%で神経を侵し、弛緩性麻痺や髄膜炎を引き起こします。死亡率は5~10%。多くは小児例ですが、成人例も報告されており、成人では死亡率が30%という報告もあります。WHOが天然痘に続いて撲滅を目指している感染症で、予防接種により世界的に激減しており、WHOによると2018年には33例の報告があります。多くはアフガニスタン・パキスタン・アフリカでの発生ですが、2019年現在ではパプアニューギニア、インドネシア、中国、ミャンマー、フィリピンでも発生例があります。

ECDCホームページより引用

2019年9月現在のポリオ発生国:ECDCホームページより引用

予防接種

予防接種

日本の国産ワクチンとしては、DPT(三種混合:トリビック®)、DPT-IPV(四種混合:テトラビック®、クアトロバック®、スクエアキッズ®)、DT(二種混合)、TT(破傷風トキソイド)、不活化ポリオワクチン(イモバックスポリオ®)があります。輸入ワクチンとして、Tdap(三種混合:Boostrix®、Adacel®など)があり、これはジフテリアと百日咳の量を減らしたワクチンです。
世界的には破傷風の追加接種は混合ワクチンのみであり、小児期ではDTP、青年~成人ではTdapが使用されます。渡航者に対しては、DTPもしくはTdapはルーチンワクチンの位置づけです。トラベラーズワクチンとして日本においても破傷風の追加接種を検討する場合は、DPT、DPT-IPV、Tdapが優先されます。それは前述の通り、破傷風のみならずジフテリアや百日咳が日本を含めた世界では流行しており、それらも追加接種すべきだからです。破傷風トキソイド単独ワクチンは、受傷後の治療用ワクチン(受傷後に保険適応があるのは破傷風トキソイドのみ)であり、トラベラーズワクチンとして追加接種で使用するものではありません。例外として、昭和43年以前生まれの方の基礎免疫をつける場合にのみ一部使用することがあるのみです。なお、アメリカでは破傷風トキソイド単独ワクチンは存在せず、受傷後の治療用ワクチンにおいても混合ワクチンを使用することになっています。ポリオのリスク地域へ渡航される方は、DPT-IPVか不活化ポリオワクチン接種が必須になります。
基礎免疫がある方は追加接種として1回接種すれば5~10年有効です。

ワクチンスケジュール

  • 基礎免疫力がある方
  • 基礎免疫力がない方
髄膜炎菌感染症

髄膜炎菌による感染症で、中枢神経系に炎症を引き起こし、致死率は10~50%と極めて高い疾患です。世界的には毎年約30万人の患者が発生し、3万人が死亡していると報告されています。その多くはアフリカの髄膜炎菌ベルトと呼ばれる地帯で発生していますが、アジアやヨーロッパ、北米など先進国でも発生が認められます。特にヨーロッパへ帯同赴任されるお子様では予防接種で問題になることがあります。
近年ではマスギャザリング(一定期間,限定された地域において,同一目的で集合した多人数の集団)で発生例が見られ、イスラム教の巡礼であるHajjやumrahでは髄膜炎菌ワクチン接種が義務づけられています。日本では、合宿や寮生活などの集団生活に関連して発症する危険性があります。
渡航ワクチンとして接種する場合は、アフリカやサウジアラビア渡航の方、留学をされる方、ボーイスカウトによるジャンボリーに参加される方、医療関係者が多いです。
髄膜炎菌ベルトを下図に示します。

髄膜炎菌感染症

CDCホームページより引用

感染経路・・・飛沫感染

病原体・・・細菌(髄膜炎菌グループA・B・C・W・Y)

症状・・・~14日の潜伏期間の後に、髄膜炎の症状である頭痛、発熱、首の硬直、意識障害、けいれんなどが起こります。重症になると体に発疹が出ますが、ここまでくるとなかなか助かりません。治療しなければ高率に死に至ります。治療しても致死率は10%と高いです。救命できても後遺症が残ることがあります。

予防接種

髄膜炎菌感染症ワクチン

多糖体ワクチン、結合型ワクチン、B群に対するワクチンの3種類があり、血清群でわける場合は髄膜炎菌ACWY群に対する4価ワクチンと1~3価ワクチンがあります。4価ワクチンでは、日本の承認ワクチンである結合型ワクチンのメナクトラ®、未承認ワクチンとしてはMenveo®、Nimenrix®(それぞれ結合型ワクチン)があります。1~3価ワクチンは日本では未承認となっています。
渡航ワクチンとしては、4価ワクチンを接種することがほとんどです。B群髄膜炎菌ワクチン(1価)はイギリスやEU諸国、アメリカ留学時など一部の国で要求される場合に接種する以外は接種機会は稀です。
接種スケジュールは、各国により異なります。アフリカの髄膜炎菌ベルト地帯・サウジアラビアへの渡航であれば、1回接種で5年程度有効です。留学時に必要な場合は、年齢や要求される書類により回数に違いがあるため、要求される事項に従って接種します。

ダニ媒介脳炎

ダニ媒介脳炎

ヨーロッパ、ロシア、モンゴル、中国の一部、日本(北海道)など比較的寒い地域でみられるダニが媒介する感染症です。世界的には年間13000人ほど発生していると言われています。特に多いのは、ロシア、スロベニア、バルト三国です。日本では、2018年時点で北海道で4人の患者発生報告があり、ヨーロッパでも日本人が1名ほど感染した事例が報告されています。国内外での日本人患者5名のうち、3名が死亡しています。札幌の公園ではかなりの数のウイルスがいることが報告されています。
海外では茂みの多いところ、森林に行かれる場合は当然リスクが高くなりますが、町中の公園などの草むらにもダニはたくさんいるため、特にお子さんが公園で遊ばれる場合はダニに咬まれないよう注意しましょう。

ダニ媒介脳炎2

感染経路・・・ダニ咬傷、殺菌されていない乳製品の摂取

病原体・・・ダニ媒介脳炎ウイルス(3つのサブタイプあり)

症状・・・4~28日間の症状のない期間があった後、頭痛、筋肉痛、倦怠感や発熱が起こります。悪化すると、脳に障害が出るようになり、呼吸ができなくなることがあります。重症型の場合には死亡することがあります。2/3くらいの人は何の症状もおこりません。
ヨーロッパタイプの死亡率は2%、後遺症は30%、シベリアタイプの死亡率は6~8%、極東タイプの死亡率は20~40%と言われています。特異的な治療はありません。

予防接種・・・現在国内承認ワクチンは無く、未承認ワクチンとしてFSME-IMMUNⓇ、EncepurⓇがあります。これらは互換性があると言われています。予防効果は高く、98%以上と報告されています。

ワクチンスケジュール

ワクチンスケジュール

麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘

麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘はヒトーヒト感染で起こる感染力の強いものです。免疫がなければ空気感染・飛沫感染などで容易に感染してしまいます。R 0:アール ノートという概念がありますが、これは、ある感染者がその感染症に全く免疫を持たない集団に入った時、直接感染させる平均の人数のことです。麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘はこのR 0が大きく、極めて強い感染性を有することがわかります。下記にそれぞれのR 0を示します。これは様々な論文をもとにまとめたものです。

  • 麻疹
  • 水痘
  • 麻疹
  • 水痘

麻疹

麻疹

麻疹ウイルスによっておこる感染症で、空気感染によるため極めて高い感染力を有します。発熱・風邪症状・目の充血やめやに・発疹が主症状ですが、修飾麻疹と呼ばれるものは典型的な症状が出ないこともあり、診断は困難です。麻疹は合併症の頻度が高く、30%で1つ以上の合併症を引き起こすと言われています。その合併症とは、中耳炎(5~10%)、下痢(8%)、肺炎(6%)、脳炎・急性散在性脳脊髄炎(0.1%)、亜急性硬化性全脳炎(数万人に1人)などがあり、先進国での死亡率は0.1%と言われています。麻疹は東南アジアやアフリカなど途上国で流行していますが、近年ではヨーロッパ、日本、アメリカを含めて先進国でも大流行をきたしています。下記に麻疹の2018年8月~2019年8月の1年間の流行のマップ(WHOデータ)を示します。

風疹

風疹

風疹ウイルスの飛沫感染によっておこる感染症です。発熱・風邪症状・頚部リンパ節腫脹、発疹が主体ですが、典型的な症状が出ない場合もあります。合併症として非常にまれに脳炎(0.00016%)がありますが、最も怖い合併症が、先天性風疹症候群(CRS)というものです。これは妊娠初期の妊婦さんが風疹にかかると、胎児に難聴・先天性心疾患・白内障などの目の病気が生じ、重症の場合は長期生存ができない例もあります。CRSを防ぐためには、社会全体で妊婦さんを守る必要があり、集団免疫をしっかりつける必要があります。
2018~2019年には世界的にみても日本が突出して感染者が急増しています。下記に風疹の2018年8月~2019年8月の1年間の流行のマップ(WHOデータ)を示します。

おたふくかぜ

流行性耳下腺炎と言い、ムンプスウイルスの飛沫感染によっておこる感染症です。耳下腺の腫脹、痛み、発熱をきたします。特に年齢が高くなれば合併症の頻度が高くなります。合併症としては、精巣炎・卵巣炎(15~30%)、髄膜炎(1~10%)、脳炎(0.02~0.3%)、難聴(0.5%)、膵炎(0.3%)、その他稀ながら心筋炎・関節炎などがあります。

水痘

水ぼうそうのことで、水痘帯状疱疹ウイルスによっておこる発疹を引き起こす病気です。空気感染、飛沫感染、接触感染により感染します。全身に水疱、膿疱が出現し、かさぶたになって治癒します。
子供に多い病気ですが、免疫のない成人がかかると重症化しやすいと言われています。
合併症としては、皮膚・軟部組織の細菌感染症、肺炎、敗血症、脳炎などがあります。帯状疱疹として出る場合は、帯状疱疹後神経痛が問題になります。

予防接種

2019年10月現在、日本で承認されているのはMRワクチン(麻疹風疹混合)、おたふくかぜワクチン、水痘ワクチン、麻疹単体ワクチン、風疹単体ワクチンがあります。近年、麻疹・風疹の流行に伴い、単体ワクチンの流通量が激減し、麻疹・風疹の予防接種を行う場合は基本的にはMRワクチン接種となります。世界的には、MMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ混合:Priorix®、MMR-Ⅱ®)、MMRV(麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘混合ワクチン:ProQuad®など)が流通しています。
上述したように、麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘は途上国を中心に、近年では先進国も含めて世界的に大流行しており、WHOが警告を出しております。免疫がない方は罹患すると重症化し、死亡することもあるため、必ず対策が必要になります。これらは、免疫があれば罹患することはありません。一番良い方法は免疫があるかどうかをチェックすることです。免疫には細胞性免疫と液性免疫というものがありますが、本来は細胞性免疫を測定できるのが良い方法です。しかし、現状では細胞性免疫をきちんと測定できる方法はまだ確立されていないため、液性免疫の測定、すなわち抗体検査を行うしかありません。

下記に推奨する抗体検査法を載せます。

麻疹PA法 256倍以上で陽性
麻疹NT法 4倍以上で陽性
風疹HI法 男性16倍以上で陽性
女性32倍以上で陽性
ムンプスEIA/IgG法
(おたふくかぜ)
5.0以上で陽性
水痘EIA/IgG法 4.0以上で陽性

これらの基準を満たさない場合は、抗体不足と判断し、不足分を接種します。
麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘のワクチンは生ワクチンといって、生きたウイルスの病原性を弱めて製造されています。もともとは1回接種したら生涯にわたる効果が期待されていましたが、1回接種だけでは流行を抑えることができなかったため、現在では2回接種が原則となっています。CDCからの報告では2回接種で麻疹の有効性は約90-95%程度、風疹の有効性は約97%、おたふくかぜの有効性は約49-92%とされています。特におたふくかぜワクチンはなかなか抗体がつきにくく、2回の接種では有効性がなかなか上がらず、CDCではおたふくかぜの流行時は3回目の接種を考慮することとなっております。麻疹・風疹・おたふくかぜ・水痘のワクチン接種が一般的に2回接種でよいと言われているのは、公衆衛生学的見地からの話で、大流行をおさえるには高い集団免疫をつける必要があるため2回接種が必要であるということです。個人免疫で考えると、2回接種をしても麻疹は5-10%、風疹は3-6%、おたふくかぜは30-50%の方がなかなか免疫がつかないため、ワクチン接種後は可能な限り6週間後以降に抗体検査を行い、免疫がついたかどうかを確認することが重要です。2回接種する場合は、初回より4週間あける必要があります。

ワクチンの副作用について

一般的な副作用

ワクチンにより異なりますが、1~40%程度。

接種部位の反応:疼痛、腫脹、発赤

発熱

全身倦怠感

頭痛、関節痛、筋肉痛

腹痛、下痢、吐き気

稀な副作用

アレルギー反応、特に注意すべきはアナフィラキシー

急性散在性脳脊髄炎

ギランバレー症候群

けいれん

血小板減少性紫斑病

間質性肺炎

脳炎・脳症

脊髄炎など

 

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